新卒からの終身雇用は遥か昔。今やキャリアアップの手段として、各個人のスキル向上に加え、転職という選択肢が一般的になってきています。
とはいえ、転職回数が多ければ多いほど、キャリアアップが実現し、給料もうなぎ上り・・・ということにはもちろんなりません。転職活動を考える際によく聞く「転職回数の壁」は本当にあるのでしょうか?
キャリアアップ=転職という構図はホント?
ひと昔前と違い、ただ漫然と会社にいても、自動的に給料が上がったり昇進したりということが望めなくなった時代において、「もっと何かしたい。もっとチャレンジできる場所があるのではないか?」という意識の高い人にとって、働く環境を変える「転職」という選択が、キャリアップの手段となっていることは紛れもない事実です。
実際に、転職してよかった!という成功例も多数存在しているのです。
しかしながら、あくまでも転職はキャリアアップのためのひとつの手段でしかありません。もしかしたら、転職せずに社内での部署異動や海外を含む転勤によって、キャリアアップは果たせてしまうかもしれないのです。では、それはどういった場合なのでしょうか。
キャリアアップの定義は明確か?
ここで重要なのは、あなたにとって「キャリアアップ」という概念が自分の中で明確に腹落ちできているか、いないか、という点です。
そもそも、「キャリア」という言葉の定義が現在では多様化され、
- 企業内での昇進・昇給
- 定年に至るまでの長いスパンでのライフプランをも含めた働き方
- 単に、イメージとして、「大きな企業で高い給料をもらう」ということ
- 特殊なスキルを身につけ、ご意見番的な存在になることをキャリアアップ
- または、年齢に関わらず実力で評価され、昇進を果たすことをキャリアアップ
と捉えていたならば、転職の前にその特殊なスキルを身につける手段を考える必要があるでしょう。
と考えるのであれば、今の会社が実力主義的な風土でない以上、転職という選択肢が濃厚になってくるのです。
つまり、単に転職をすれば何かが解決する、という意味でキャリアアップを捉えていては、次で述べる「転職の壁」に間違いなくぶつかってしまうのです。
これが「転職の壁」だった!
よく、転職エージェントの人々が「あまりに転職回数が多いのはちょっと・・」と口にするのを、おそらくどこかで聞いたことがある人もいると思います。
あくまで一般論ですが、特に30代前半ぐらいで転職回数が3回を超えている人は、
- 例えば
- 入った企業が入社後すぐに倒産した
- 入社後にブラック企業であることが発覚した
- 過重労働により体調を崩して退職した
のような特殊な事情がない限り、
- 「飽きっぽい人」
- 「我慢が足りない人」
- 「長く続かない人」
というネガティブなイメージを持たれてしまうようです。
それが、華々しい大企業を渡り歩いている人であったとしても、やはりイメージは同じようです。
若いうちは「自分探し」の時期でもあり、多少の迷いや思い切ったキャリアチェンジも許される時期ではありますが、それでもせいぜい3度まで・・というのが労働市場の考え方なのです。
しかし、繰り返すようにこれはあくまで一般論です。
その転職回数にそれなりの意味があり、それを本人が誰に聞かれても矛盾なく話せるレベルで腹落ちしているならば、回数が30代前半で3回を超えていようがいまいが、企業側もあまり気にしません。
例えば、
- 新卒で大企業に入社したが2年経ち、納得いくまで働きたいと考え、ベンチャー企業やコンサルティングファームを渡り歩き
- 30代を迎え、若い頃に働いて得たスキルを使って会社の成長に貢献し、見届けることを自分の手で成し遂げてみたいと思ったから中小企業に転職した
それに対して、
- とりあえず自分探しをずっとやってきたけれどなかなか見つからず
- 転職の度職種も変わり、人間関係・組織に合わないという理由での退職もあり
- 今回またキャリアチェンジをやってみたい
この2名では、企業側の受ける印象はだいぶ違うでしょう。前者の人と後者の人の唯一の違いは、自分がどうキャリアというものを捉え、そのステップにどの企業を選ぶのかという点が明確になっていたか、いなかったかの違いです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「転職回数の壁」とは、偶然に迫ってくる脅威ではなく、必然的に自分が作り出してしまうものに過ぎず、それはひとえに、自分自身が「キャリア」をいかに真剣に考えているか、に尽きるのです。
もし今、転職を考えているならば、過去の自分のキャリアを棚卸し、その時々で何を考え、何を目指しており、今、転職によって何を得ようとしているのかを書き出してみるとよいでしょう。
キャリアデザインに正解はなく、人それぞれです。長い長い道のりをどう歩くか、「転職」というワードが頭に浮かんだら、まずはそこから考えてみてはいかがでしょう。